歌の途中で息が足りなくなる。長いフレーズの後半で声が小さくなる。そんなときに勧められることが多いのが「腹式呼吸」です。
ところが、お腹を大きく膨らませることに集中しすぎて、肩や喉まで力んでしまう方もいます。
歌で大切なのは、できるだけ多く吸うことではありません。必要な量を静かに吸い、フレーズに合わせて息を使えることです。
腹式呼吸は「お腹だけで呼吸する方法」ではありません。
肩や胸を固めず、吸った息を歌に合わせて安定して使うための練習として考えましょう。
歌でいう腹式呼吸とは?
息を吸うとき、横隔膜が収縮して下がり、肺へ空気が入ります。それに伴ってお腹まわりが自然に動きます。歌の現場では、この動きを感じやすい呼吸を「腹式呼吸」と呼ぶことが一般的です。
ただし、お腹を力いっぱい前へ出す必要はありません。肩が大きく上がらず、首や喉が楽で、静かに息を吸えることを目安にします。
歌の呼吸で確認したい3点
- 吸うときに肩や顎が固まっていないか
- 吐き始めに息が一気に漏れていないか
- フレーズの終わりまで声量が急に落ちていないか
初心者向け・腹式呼吸の練習3ステップ
ステップ1.楽な姿勢を作る
足を腰幅ほどに開き、膝を固めずに立ちます。胸を反らしすぎず、頭が上から軽く引かれているような姿勢を作ります。
最初は仰向けで膝を立て、お腹に手を置いても構いません。呼吸に合わせて手が自然に動くかを確認します。
ステップ2.静かに吸い、一定に吐く
鼻または口から2〜3秒で静かに吸い、「スー」と6〜10秒ほど吐きます。長さを競う必要はありません。息の音や強さが途中で急に変わらないことを優先します。
苦しくなる前に止め、普通の呼吸へ戻します。3〜5回程度から始めましょう。
ステップ3.声を加える
一定に吐けたら、話しやすい高さで「うー」と3〜5秒声を伸ばします。息だけのときと同じように、声量が急に変わらないかを確認します。
次に、歌いたい曲の短いフレーズを「う」だけで歌い、最後まで余裕が残る息の量を探します。
腹式呼吸でよくある勘違い
- 毎回、限界まで深く吸う
- お腹を硬く押し出したまま歌う
- 息を強く出せば大きな声になると思う
- 長く吐けるほど歌が上手いと考える
曲の中で息を続かせる4つの工夫
1.ブレスの位置を歌詞に書く
息が足りなくなってから慌てて吸うのではなく、意味の切れ目や伴奏の隙間に印をつけます。短く吸える場所も見つけておきましょう。
2.最初の言葉で息を使いすぎない
フレーズの頭を強く歌いすぎると、後半の息が足りなくなります。最初を70%ほどの声量で試し、最後まで安定するか比べてみます。
3.子音と母音を分けて確認する
子音が強すぎたり、母音から息が漏れすぎたりすると、同じ長さでも苦しくなります。難しい部分だけをゆっくり読み、どの言葉で息が減るかを確認します。
4.自分に合うキーへ調整する
高すぎる・低すぎる音では、声を保つために余分な息や力を使う場合があります。キーを変えて、呼吸の余裕がどう変わるか比較しましょう。
息苦しさや痛みがある場合は無理をしない
呼吸練習でめまい、強い息苦しさ、痛みが出た場合は中止してください。呼吸器や循環器の症状がある方は、自己流のトレーニングで解決しようとせず医療機関へ相談しましょう。
声の健康については、NIDCD「Taking Care of Your Voice」でも、歌唱時の適切な呼吸や、疲れている声を休ませる重要性が紹介されています。
一宮校では呼吸だけでなく、曲の中での使い方を確認します
息が続かない原因は、呼吸量だけとは限りません。姿勢、音域、声量、発音、フレーズの取り方が重なっている場合があります。
ナユタス一宮校では、目的やジャンル、声の状態、相性、曜日を踏まえて講師をご案内します。呼吸練習だけを繰り返すのではなく、歌いたい曲の中で何を変えるかを一緒に整理します。
初めてのレッスン内容は、「ボイトレでは何をする?」でも詳しく紹介しています。
よくある質問
Q.毎日何分練習すればよいですか?
最初は1回3〜5分でも構いません。長時間より、姿勢と息の安定を確認しながら短く続けることを優先してください。
Q.鼻と口、どちらから吸いますか?
歌の中では時間が短いため、口から吸う場面もあります。練習では鼻・口のどちらでも、音を立てすぎず首が楽な方法を確認しましょう。
Q.お腹に力を入れ続ける必要がありますか?
硬く固め続ける必要はありません。フレーズに応じて息を調整できる、しなやかな状態を目指します。
Q.体験レッスンには何を準備すればよいですか?
息が足りなくなる曲と、その部分が分かる音源をお持ちください。どこで吸っているかも共有できると確認しやすくなります。
「たくさん吸う」より「必要な息を使う」
歌の腹式呼吸は、お腹の動きを大きく見せることが目的ではありません。楽に吸い、息を一定に使い、曲の言葉や音程へつなげることが大切です。
自分の息の使い方を曲の中で確認したい方は、歌いたい1曲を持って体験レッスンへお越しください。

